神館《カウダチ》と称してゐる。神の為の台盤所の義である。古代には、其人たちの侍する内廷の控へ所であつたのだらう。「め」は元より「べ」に通ずる集団人の義である。此中から、君の座床近く、夜昼祗候するものが、まちぎみ[#「まちぎみ」に傍線]・まへつぎみ[#「まへつぎみ」に傍線]である。まへつぎみ[#「まへつぎみ」に傍線]の中にも、旧豪族の人々の交る様になつてから、此を大まへつぎみ[#「大まへつぎみ」に傍線]と言ふ様になつた。おみ[#「おみ」に傍線]は、君から多少遠慮を持つた臣・従者への称へであり、大まへつ君[#「大まへつ君」に傍線]は、全然君の配下としての称である。
此等のおみ[#「おみ」に傍線]の家々又は、国々の神主国造の家々には、宮廷と似た伝承が行はれてゐた。さうして其小氏なる家々にも、配下たる村々の民の上にも、次第に宮廷の信仰生活が影響し、又混同を生じた。或地方では、禊ぎを主とするのに、ある国々では祓へを以ておなじ様な事件を解決した。其混乱は、吉事を待つ為の禊ぎを、凶事を贖《あがな》ひ棄てる方便の祓へと一つにして行ふ様になる。
祓へを行ふ地方で行《おこなは》れた、五月雨期の男女神人の禁
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