に、表は矛盾なく、形を整へてゐるが、ほぎ歌・鎮護詞《イハヒゴト》・魂ごひ歌などの展開の順序を知つてかゝると、長い年月の変化が語られる。後世人の理会力や、感受性に毫も障らぬ様に整頓せられてゐる、詞章・歌曲の表現法が、思ひもかけぬ発生過程を持つてゐる事に思ひ到るであらう。
すめみま
記・紀すでにさうした解釈を主として居り、後世の学者又其を信じてゐる所の皇孫即すめみま[#「すめみま」に傍線]とする語原説は、尠くとも神道の歴史の第二次以下の意義しか知らぬものである。続紀《シヨクキ》宣命などを見ても、みま[#「みま」に傍線]は聖躬の義で、宮廷第一人なる御方の御身――即、威霊《マナ》の寓るべき御肉身――の義であつた。其が、宣命の原型からあつた形を二様に分岐して、記・紀に趣く伝承では、新しい合理化によつて、聖孫《アメミウマゴ》の義としたのだ。其一方を継いだ宣命の擬古文では、聖躬《スメミマ》とした。だから、第二人称の敬称みまし[#「みまし」に傍線]は、此と関係のあるものに違ひないと思ふ。
此みま[#「みま」に傍線]或はおほ・みま[#「おほ・みま」に傍線]なる御肉身とまな[#「まな」に
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