は、ふり[#「ふり」に傍線]よりもうた[#「うた」に傍線]が尊いとの考へからである。他民族出の詞章で、殊に近代に大歌に編入せられたものをのみ、ふり[#「ふり」に傍線]と言ふ様だ。
うた[#「うた」に傍線]を語根にした動詞のうたふ[#「うたふ」に傍線]が、古く分化して、所謂四段のものと、下二段活用のものとになつてゐる。前者は、うた[#「うた」に傍線]を対象としての動作即謡ふである。後者は訴ふの原形となつた。此は謡ふに対する役相であるが、神事を課せられる者には、公式に臨む臣民の動作として、能相風に考へられてゐる。祓《ハラ》ふる・卜《ウラ》ふるの例である。謡ふ事によつて、神又は神人の処置判決を待つ式である。
元来うた[#「うた」に傍線]は、奏上式のふり[#「ふり」に傍線]に対するもので、宣下するものであつた。神の叙事詩の抒情部分を言ふもので、呪詞におけること[#「こと」に傍線]――ことわざ[#「ことわざ」に傍線]――の発達したものである。こと[#「こと」に傍線]の端的で直接なのに対して、うた[#「うた」に傍線]は、幾分婉曲に暗示の効果に富むものらしい。神及び神人の宣るのりと[#「のりと」に傍
前へ 次へ
全67ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング