、長章の歌曲の末を、くり返して謡ひ乱《ヲサ》める形である。此が段々反歌として、本末の対立部分と明らかに認められ出す機運と時代を一つにした。影響が相互関係で、次第に細やかになつて来た。そこに、今まで久しく無意識にくり返してゐた様式の成立と、声楽要素の変化が急速に来たものらしい。
長曲又は小曲でも、奇数の句で最後の句を反乱すると三句の片哥の形である。結んでゐるものは、其が、対句辞法が盛んに行はれる時代になると、最後の一聯と、結句だけでは不足感が出て来る。そこで、二聯と結句とを、反乱する様になる。人麻呂の長歌などは、殊に其措辞法の上の癖から、結末の五句が、一つの完全な文章になつたのも多いし、なりかけてゐるのも沢山ある。反歌はすでに、一つの様式として認められて居ながら、まだその発生期の俤が、長歌の結びの句に残つて居た。
四 うた[#「うた」に傍線]の時代
記・紀ですら、ふり[#「ふり」に傍線]と言ふべきものを、うた[#「うた」に傍線]に入れて居る。大体大歌と称するものは、其用途から見て、殆どすべてふり[#「ふり」に傍線]に属するものとしてよいのであるが、かうした称呼をとつてゐるの
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