言うたことば[#「ことば」に傍線]、即、託宣であつた。神が現れて、自分の言ひたい事を言うた、其ことば[#「ことば」に傍線]である。神のことば[#「ことば」に傍線]が、何の為に告げられたかと言ふ事を、考へねばならぬ。
神が村々へ時を定めて現れ、あることば[#「ことば」に傍線]を語つて行く。ことば[#「ことば」に傍線]は、恐らく村人の要求通りのことば[#「ことば」に傍線]であつて、而も其が毎年繰り返される。村人の平穏無事で暮せる様に、農作物が豊かである様にと言ふ、お定り言葉を神は言うて行つたのである。託宣の形は遺つて居ないが、思ふに単に神が、実利的のことば[#「ことば」に傍線]を言うて行くのではなく、神現れて、神自身の来歴を告げて去る。そして、村人を脅す家なり村なりの附近に住んで居る低い神、即、土地の精霊と約束して行く。其は、自分はかう言ふ神だぞ。だからお前は自分の言ふ事を聴かねばならぬ、と言ふ意味のことば[#「ことば」に傍線]であつた。約束をした後、神は村を去る。
此が毎年繰り返される。此ことば[#「ことば」に傍線]が村人にとつて非常に大切であつた。村人は是を大切なものとして伝承した。其
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