料《ハカ》り知れない祖《オヤ》々の代から信仰として伝へられ、形式のみ残つて、当代の信仰と合はなくなり、意味のわからなくなつたものが沢山ある。
昔の村――大きな国を知らない時代――の生活を考へると、村の最重大な中心になるものは、神祭りである。祭り以外の事は多くは場合々々になくなつてもよかつた。神祭り以外の事としては、神の信仰に関する事、是等は総て律文で伝へられて居る。失はれない信仰が村々を安全に保たせるものだと信じて居た。此神の信仰に関するものが、後々まで遺つて、文学もこゝに出発点があつた。
即、神々を祀る場合、神に関する信仰を伝へた言葉、一種の文章なり、ことば[#「ことば」に傍線]なりが、永く久しく残つたのである。其中には社会状態・信仰状態の変化に因つて、無意味になつて来たものもあるが、ともかくも、神に関する口頭の文章のみが、永く久しく遺る力を有つて居た。此以前に、文学の興る出発点は考へられない。
二
神の信仰、神祭りに関することば[#「ことば」に傍線]は、如何にして我国に現れたか。最初に吾々の祖先が、是は伝へなければならぬと思つたことば[#「ことば」に傍線]は、神自身の
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