とり入れられ、支那の詩・賦・散文によつて、日本人の文学上の感情が醇化せられて、新抒情詩が発生した。奈良朝の頂上になると、大伴旅人・山上憶良が、殊に有力に見える。此時代になると、旅人や、憶良や、それから其以外の有識階級の人々によつて作られた抒情詩が、沢山あつた。日本にほんとうの文学らしいものが出来たのは、聖武・孝謙天皇の頃である。
けれども代作したり、よそごとに言うて居る様な応用的の動きから出来た古い時代の歌でも、立派なものゝあるのは、決して否まれぬものである。文学は、動機や態度によらずして、其人の力によつてよい物が出来る事を、よく呑みこんでおく必要がある。
四
処が、宴歌も亦寿詞より出て来る。宴歌は、宴会、即神々を迎へて、饗応する時の歌が、最初である。神が歌つた寿詞を語るか、寿詞を語ると同時に其場の即興、即、寿詞の崩れを歌うたことが、万葉の中に、見えて居る。神に歌をうたふ。神が又、此に対してうたげの歌[#「うたげの歌」に傍線]をうたふ。此は多くの場合、新しい建物を造つて宴歌をうたふ事に始まる。即、新室を建てた時に、新室《ニヒムロ》ほかひ[#「ほかひ」に傍線]をする。此新室
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