き直されてゐる様である。あめのさかて[#「あめのさかて」に傍線]を拍つて、征服者を咀《のろ》うた一つの物語が、不調和に感じられるまで整理せられた性格の記述を裏切ると共に、かうした憤怒・憎悪・嫉妬を十分に具備した人として伝へられてゐたに違ひない。
村々の神主
日本歴史の立ち場から見た古代生活は、村を以てゆきづまりとする外はない。其以上は、先史遺物学者との妥協をめど[#「めど」に傍線]にした空想に過ぎない。文献によつて知る事の出来る限りの古代には、既にかなりに進んだ村落組織が整うてゐた。村限りの生活が、国家観念に拡つて来はじめたのが、万葉びとの世のはじめで、其確かな意識に入り込む様になつたのが、此論文の主題の結着である。
其以前は、村自身で、一つの国家と考へてゐた時代である。よその村は、敵国である。もつと軽い語で言へば、いつでも敵国となるはずの国々であつた。さういふ時代の話からしてかゝらねば、万葉びとの国民としての心持ちは、考へることが出来ない。
村を又、ふれ[#「ふれ」に傍線]・しま[#「しま」に傍線]とも、くに[#「くに」に傍線]・あがた[#「あがた」に傍線]とも言うたの
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