、一書には、たしむ[#「たしむ」に傍線]となつてゐた筈である。夜半翁も必、たしむ[#「たしむ」に傍線]と蔵すとの間に、関係ある事を認めてゐたに違ひない。紀州日高では、物を貯へたり、用意したり、一部分残しておくと言ふ風な用語例に、たしなむ[#「たしなむ」に傍線]を使うてゐる。女のたしなみ[#「たしなみ」に傍線]など言ふのは、用意・心掛けなど言ふ意が、姿・形の上にも転用せられたので「芸事について、何のたしなみ[#「たしなみ」に傍線]がある」など言ふ事もある。思ふに「嗜」と言ふ字にくつゝいて残つてゐる、たしむ[#「たしむ」に傍線]と言ふ語の意味は、酒呑みが塩辛でも舐める様に、ちび/\玩味することを言ふのではなからうか。たし[#「たし」に傍線]と言ふ語根は、な[#「な」に傍線]と言ふ体言副詞語尾の有無に係らず、動詞語尾む[#「む」に傍線]に続いたので、たしむ[#「たしむ」に傍線]・たしなむ[#「たしなむ」に傍線]同じ語と言ふことが出来る。此語根たし[#「たし」に傍線]は可なり古いもので「確《タシ》か」系統のたし[#「たし」に傍線]とは、別に展びて来たものらしい。今も、京阪にも東京にも言ふ、少量
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