で、使ふにも気のへる様な程度なのを、たしない[#「たしない」に傍線]と言ふのは「足しない」ではなくて、物惜しみする意のたし[#「たし」に傍線]の古意を存してゐるのであらうか。尚人をたしなめる[#「たしなめる」に傍線]など言ふ場合は、心掛け足らぬを叱つて、注意を喚び起す意とも思はれるが、どうやら、はしたなむ[#「はしたなむ」に傍線]の略転らしく考へられる。
○おいによ[#「おいによ」に傍線] 大阪では、夫より妻が年がさな場合に、其の妻をおいによ[#「おいによ」に傍線]と言ふ。又さうした夫婦関係をも言ふ様で「向《ムコ》のうちは――や」などゝも使ひます。おいによおぼお[#「おいによおぼお」に傍線](老い女房)の略語なる事は勿論です。おい[#「おい」に傍線](連用)おゝ[#「おゝ」に傍線](終止)の二つの活用は見られます。連用はて[#「て」に傍線]に接して、おゝて[#「おゝて」に傍線]・おゝた[#「おゝた」に傍線]などゝなります。おい[#「おい」に傍線]・おゝ[#「おゝ」に傍線]は勿論老ゆ[#「老ゆ」に傍線]なのですが、単に老年を現すことはなく、齢を比較して、誰は誰よりもおゝてる[#「おゝてる
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