阪のぼろい[#「ぼろい」に傍線]はこもろい[#「こもろい」に傍線]と一つで、脆いと言ふ語が語原であらう、と言うてゐたことである。ぼろい[#「ぼろい」に傍線]と言ふのは「手もなくうまい事をした」場合などに言ふ語で、過大な好結果を示すのである。言ひ換へれば、さのみの苦労をせずに、思ひがけぬ利益を得ることをいふ。今日の言語情調からすれば、ぼる[#「ぼる」に傍線](貪)と言ふ語と親類らしく感ぜられるのであるが、事実は、やはり別であらう。
其は、ぼろくそ[#「ぼろくそ」に傍線]と言ふ語が、同時に行はれてゐるのを、参考して見ても知れる。ぼろくそ[#「ぼろくそ」に傍線]は「苦労なくはかどる」或は「努力せずして思ひの外に速かに願ふ結果を獲る」意である。当方でなく、対象が脆く自分の思ふまゝになる、と言ふのが本義なので、貪《ボ》るが語原とすれば、ぼろい[#「ぼろい」に傍線]の意は訣つても、ぼろくそ[#「ぼろくそ」に傍線]は解釈がつかぬのである。ぼろい[#「ぼろい」に傍線]――こもろい[#「こもろい」に傍線]――もろに[#「もろに」に傍線]と並べて見れば、今も東京に行はれてゐるもろに[#「もろに」に傍線]と
前へ
次へ
全20ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング