、男が宮籠り、女の居籠ることがあつたので、五月五日を女の家(女殺油地獄)と言ふ様な――男だけの祭り故――諺もあつたであらう。尤、近松の頃には、此語の意味は訣らなかつたであらう。
○おとごぜ[#「おとごぜ」に傍線] 伝教大師・性空上人・皇慶律師などに使はれた、乙護法《オトゴホフ》といふ護法童子は、恐らく別々の者でなく、術者の手に転々して役せられて居た者、と考へられたであらう。さすれば、頗長命な役霊(すぴりつと[#「すぴりつと」に傍線])である。此護法の名が、民間に遍満して、一種滑稽な顔をした、ぱつく[#「ぱつく」に傍線]風の小魔と考へられ、乙護々々と略称されたのが、乙御と言ふ風の民間語原説から、乙御前《オトゴゼ》と還元する様になつて、一種の妖怪と考へる事になつたのであらう。
○髪形と子ども 子どもを、髪の形で類別すること、古代・近代一列である。うなゐ[#「うなゐ」に傍線]・めざし[#「めざし」に傍線]・をはなり[#「をはなり」に傍線]・ひさごばな[#「ひさごばな」に傍線]・かぶろ[#「かぶろ」に傍線]は、あまりに古い名である。わらは[#「わらは」に傍線]なども、とり上げずに、乱れたい儘に
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