みあれ[#「みあれ」に傍線]の五色の帛の長くなつた物なる事を示してゐるので、木綿のさがつた小枝を引き折る事ではなかつた様である。後期王朝の人々の見たみあれ[#「みあれ」に傍線]の引き綱には、鈴がつけてあつたと見えて、
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われ引かむ、みあれ[#「みあれ」に傍線]につけて祷ること、なる/\鈴のまづ聞ゆなり(順集)
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とあるのは、西行の
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思ふこと みあれ[#「みあれ」に傍線]のしめに引く鈴の かなはずばよもならじとぞ思ふ
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と言ふ歌を註釈にすれば、まづ納得は行く様である。但、二人の間には、かなりの時の隔たりはあるが、要点はまづ変化の無かつたものと見られる。
山家集の作者の目には、其引き綱が、今日我々の見馴れてゐる鰐口の緒同様に映つて居たらしいが、殺伐な年占が、引く[#「引く」に傍線]と言ふ語の他の用語例を使うて、緩やかな祈願に移つて行つたものと見るべきであらう。昔も今も、歌よみなどは、大ざつぱな事を言ふ者で、語通りに信ずるのは愚かしくも思はれるが、今一つ引くと
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あれひきに行き
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