悶死を意味する語と関係深く、又其と聯結する事によつて、一つの慣用句を形づくるのに満足した所の、古代人の心を考へる必要がある。
だが天象と、「けぬかに」「けぬべく」との間の交渉を言ひ続けてゐることから、幾分の喰み出しが出来るやうになつて来た。
譬へばまづ、「露」と「消ぬ」との関係から見ても訣る。この相互の交渉を忘れると、
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秋づけば、「水草《ミクサノ》――尾花の類――花乃阿要奴蟹《ハナノアエヌカニ》」思へど、知らじ。直《タヾ》に逢はざれば(同巻十)
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[#地から1字上げ]………………※[#ローマ数字1、1−13−21]
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……百枝さし生ふる橘 珠に貫く五月を近み、「安要奴我爾《アエヌカニ》」花咲きにけり(同巻八)
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[#地から1字上げ]………………※[#ローマ数字2、1−13−22]
露の「あゆ」と言ふ方面を受けて行き、其が更にさうした出発点をふり落してしまふと、第一例になり、又後には、単に形式としての「あえぬかに」だけが用ゐられる様になる。此例などは、世間では必此感情論理の展開を認めないであらう
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