(とも) 常にもがもな。常処女にて
[#ここで字下げ終わり]
と言ふ場合をも考へてよい。「むさず」は現状でなく、「むす」に対して言ふのである。「川上のゆつ磐群は苔むす」と言ふが、此場合は[#「此場合は」に傍線]苔むす如くにはあらずして、常若の……と言ふ事になるのである。
此方法で、同時に、「恋ひつゝあらずは」「恋ひせずは」「もの思はずは」などの「ず」も、解けてゆくのかも知れない。此には、又別の論文が用意せられる。
即、滋賀の大曲は、常によどむものなりとも、よどまずして、昔の人に復もあはめやも、と謂つた形を採るのが、第一義的であるが、其では、幾分、意義の通じる様に説明すると、「滋賀の大曲うちよどんで、人待つとも、待ちえずして……」と言ふ風になるものと見る事が出来る。さうした後、此「とも」の結着点は下に移つて、「またもあはめやも」で解決せられるのである。度々例示して置いた様に、「とも」の呼応点は、古くは「とも」の直後にあつたものだ。其が、「とも」を以て言ひ棄てる習慣の生じた為に、更に感動的に反語的に、違つた内容と、方向とを以て説明する方法が出来たものらしい。
六
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