するにあたつて、まづ説明をまたねばならぬやうな事実が、横はつてゐたのだ、と見なければならぬのである。
六 幸若舞ひの影響
能楽のあい[#「あい」に傍線]が、間のつなぎでなく、前の舞台の説明であるとすると、能楽には既に一番の中に二つの副演出が重つてゐる。後じて[#「後じて」に傍線]は更に、具体的な説明である。即、前に現れたものはこれ/\のものである、と説明するのが後じて[#「後じて」に傍線]である。勿論、新しいものゝ中には、此論理を踏んでゐないものもある。曾我もの・判官ものなどは新しいものであるから、此約束が忘れられてゐる。幸若舞ひの影響を受けて出来たものだからであらう。
ともかく曾我ものは、謂はゞ後じて[#「後じて」に傍線]だけのものである。曾我の姿を説明してゐない。船弁慶では、前して[#「前して」に傍線]と後じて[#「後じて」に傍線]とが、何の関係もないものになつてゐる。能楽本来の論理で説明すれば、前して[#「前して」に傍線]の静《シヅカ》は、後じて[#「後じて」に傍線]の知盛《トモヽリ》の霊の化身である、と謂はねばならぬ。此で見ると、元来後じて[#「後じて」に傍線]は
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