があつたからだと思はれる。いづれにしても、猿楽能のわき[#「わき」に傍点]芸だつたので、此脇方からの分立が、やがて、能と狂言とに岐《ワカ》れて行つたのである。
一体、能楽ほど多くのわき[#「わき」に傍線]を持つてゐるものは尠い。あい[#「あい」に傍線]・能力[#「能力」に傍線]がそれであり、狂言の方には、あど[#「あど」に傍線]――して[#「して」に傍線]役をおも[#「おも」に傍線]と言ふに対して、脇方を言ふ名――がある。茲で、多少結論に近い事を言ふなら、猿楽はもと/\、脇芸であつた。能楽と改称はしても、もと/\其が本領であつたのだから、宿命的に此約束が守られて、幾つものわき[#「わき」に傍線]芸を重ねて行く様になつた。能の演芸番組は、さうして成立してゐるとも見られるのである。
三 わき[#「わき」に傍線]の語原
猿楽の先輩芸は、田楽であつた。田楽は、五月の田遊びから出てゐる。田遊びに呪師《ノロンジ》系統の芸能が加味し、更に、念仏系統のものが加はつて、田楽が出来たのであつた。此田楽には、それの副演出として、田楽能が行はれた。後世では、田楽と言へば、舞ふ事と奇術・軽業《カル
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