し」に傍線]はまだよいとしても、きこえ[#「きこえ」に傍線]・とよみ[#「とよみ」に傍線]・しられ[#「しられ」に傍線]などの位置や、意義は日本的であつて、而も日本語的でない所を容易に観取することが出来る。つまり沖縄独自に発育した傾向をまじへてゐるのだ。唯、「君」は其等の中でも、古風であり、日本的に、非常に親近感を持たせる形態である。かう言ふ敬称の語には、逆語序にも正語序にも、かうしたものも亦、相応にあつたのだらう。其が又更に、琉球自身において、其を土台とした敬称の飛躍が行はれ、日本的にも理会出来るが、方言上に新しい方法が開けて来たものと思はれる。敬称の言語態様は、中世末の琉球で大きい飛躍をしてゐるやうだし、沖縄の歴史も、其頃明確度を増して来てゐる。敬称の問題は、此時期前後に属するものが多い。日本で言へば、鎌倉室町時代の後先のことである。
何としても、その前に漠たる古代が、沖縄の語の上にあつて、形容詞や副詞の上に、日本母語との間にひらきを作つて来てゐる。私どもはこの語法の相違を見ると、此は容易な短い時間の為事でないと思ふ。
元非常に近似してゐた形容詞・副詞の各条件が、日琉双方で、大きな
前へ
次へ
全61ページ中59ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング