分袂を遂げたのと、語序の問題とは、相関聯させながら考へて行く必要があるだらう。唯、品詞の分化よりも、語序の方は恐らくもつと時代をかけて来てゐるであらう。日琉共に、次第に語序を改めて行つた姿は明確につかまれないけれども、確かに双方に共通する幾つかの状態があるに違ひない。其を見る為には、此まで挙げて来た様な、逆語序に属する幾多の個々の単語を積み重ねて行く外はなからう。さう言ふ為事を、南方諸島の上にもひろげて行かねばならぬ。さうして、既にある部分まで整理せられて来た南方支那・南洋の語序研究に投合して行く日が来る。私は語序の一致を以て、語族圏を描かうとするのではない。が、我々がある点はまだ空想に残してゐる神話民族圏と、相当に一致するものがありさうなのである。
唯その中沖縄諸島ばかりは、語序の一致よりも、先に語族としての一致が言はれて居り、更にもつとひろく、民族の親近性が認められて来てゐるのである。
私が語序論を書くに到つた悲しみは、永劫に贖はれないものであらうか。
底本:「折口信夫全集 12」中央公論社
1996(平成8)年3月25日初版発行
初出:「民族学研究 第十五巻第二号」
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