意を示してゐる中、一員だけが「浮豊見」と書いてゐる。既に勢治荒富[#「勢治荒富」に傍線]が出て来てゐるので見ても、関係は思はれるが、名だゝる人、評判高い人、響きわたつた人といふ位の意で、勢頭役は、さうした人が勤めたのだらう。本部親雲上《モトブオヤクモイ》政恒からはじまつた役だといふ。おもろ[#「おもろ」に傍線]詞には、「とよむせたかこが……」など言ふ。「名だゝる稜威激しき人が」の意である。正語序らしくて、「とよむ何々」といふのがあり、宮古攻めの時の功臣「仲宗根豊身親《ナカソネトヨミオヤ》」などがある一方、女官名には先にあげた君豊(きみとよみ)があり、その記録せられた三員の名を書いてゐる。とよみ君といふ事で、名だゝる女君の褒め名だ。勢頭の「豊見《トヨミ》」「富《トミ》」も其々「とよみ勢遣」「とよみ世持」などいふ風に解いてよいのだらう。
第四にあげたいのは、敬称・尊称よりも讃称《ホメナ》とか、媚び名とか言ふべきもの。その一つ、しられ[#「しられ」に傍線]をあげる。褒め名としての、とよむ[#「とよむ」に傍線]・しられ[#「しられ」に傍線]については、柳田先生大正十年琉球渡島後、屡《しばしば》
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