人の称号から出て、貴族の妻の称へとなつたのである。此語などになると、語形の崩壊が多く加つてゐるから、合理的な説もいろ/\立つ。沖縄の古典語には、殊にさうした語原を交錯したやうな語が多い。
対語的の語といふより、同一語の変形かと思はれるほど通用したあんじ[#「あんじ」は太字]・かわら[#「かわら」は太字]・ちやら[#「ちやら」は太字]は、きつと代用語とでも言ふべきであらうか、あんじ[#「あんじ」は太字]は重く、かわら[#「かわら」は太字]は軽い――さうした時に、とり替へて使つたのであらう。かわら[#「かわら」に傍線]は頭目とか、酋長とか言ふべき語で、按司などの出来る前からのものであらう。又、玉とかわら[#「かわら」は太字]が対語になつてゐるから、玉の義から出て、玉を佩用する人――佩用を許された人――酋長・頭目とか言ふことになつたのであらう。其があんじ[#「あんじ」に傍線]が盛んに用ゐられる時代にも、地方領主の義の古語或は、馴れを感じる語として使つたのだらう。
加那志・按司についで言ふべきは、先にのべた君である。「君」は殊に女性に関係が深い。按司なども、女君が本来の意義であるかと考へてゐる
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