なし[#「かなし」に傍線]と同義語と言つてもよい程、「思ひ子」「思ひ君」など言ふ風に、特に寵愛を言ふ日本語である。此亦神の愛を受けるものなることを示す。女君の中、相当の高級にあつたうわもり[#「うわもり」に傍線](上森と宛て字する)――首里うわもりあんじ[#「首里うわもりあんじ」に傍線]・我謝うわもりあんじ[#「我謝うわもりあんじ」に傍線]・世高うわもりあんじ[#「世高うわもりあんじ」に傍線]・伊良部世高うわもりあんじ[#「伊良部世高うわもりあんじ」に傍線]のもり[#「もり」は太字]は、このもい[#「もい」に傍線](思)である。親雲上《ウヤクモイ》・のろくもい[#「のろくもい」に傍線]と男女並び言うたくもい[#「くもい」に傍線]のもい[#「もい」に傍線]も此で、「く」は別語であらう。「つかさくもいあんじ」のくもい[#「くもい」に傍線]のもい[#「もい」に傍線]も此らしい。「神のかなし人」「神の思ひ子」なる表現が、呪術的意味を持つてゐることは勿論である。古代日本語の習慣で言ふと「愛《カナ》しき何某」、もつと古い言ひ方だと、語根風になつたかなし[#「かなし」に傍線]を用ゐて「愛《カナ》し何
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