であらう。王にも、大巫にも用ゐてゐるのだが、多くは巫女の称となつて、「三十三君」などと、汎称するやうになつた。
第二は恐らく、あんじ(按司)であらう。此は男性には、貴族・領主の称号として通つてゐる。が、あじ[#「あじ」は太字](按司)と単音化するやうにもなつた。語から見れば、あるじ[#「あるじ」に傍線]の音化したものとも言へるが、かわら[#「かわら」に傍線]といふ敬称と対句になつてゐるのだから、その点も考へねばならぬ。男にかわら[#「かわら」に傍線]→ちやら[#「ちやら」に傍線]→さら[#「さら」に傍線]といふ如く、女性にもをなさら[#「をなさら」に傍線]・をなちやら[#「をなちやら」に傍線]など言ふ。勿論あんじ[#「あんじ」に傍線]は女性の尊称としても、多く使はれた。其上、あんじ[#「あんじ」に傍線]には、諸侯階級を示すやうな慣用が著しい。
あんじ[#「あんじ」に傍線]とかなし[#「かなし」に傍線]とを重複させると、敬意が深くなる。王妃又は其に相当する尊称であつた。複合する敬称は、こゝには省くが、さうした複合の為に、かなし[#「かなし」に傍線]などの敬意表現の程度が弛緩して来たらしい
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