、まづ比べて見たかつたのである。さうして、今までのところでは、親近関係の、想像してゐるほど明らかにせられてゐない南方諸語族との比較の為の準備をしておかうとしたのである。
琉球系統の言語では、語尾につく小《グワア》が、まづ人の注意を惹く。その中には、何子・何々子と言ふ風の愛称、日本語にも通常用ゐられ――殊に東北語に多い、あの愛称又は愛玩物を言ふ語尾の ko …… kkoo …… ko …… kko ……に当るものがある。其と共に「小なる」「小き物」と言ふ観念を表す小《グワア》が極めて多い。此は二つながら一つで、愛称のぐわあ[#「ぐわあ」に傍線]は心理的に言ふのであつて、小観念を表す方は、差等観を出してゐるのである。日本の人名・器用・動物などに接尾語のやうにつくこ[#「こ」に傍線]は、小観念が抽象的に心的なものを示すのであつて、対象物を比較において言ふのではない。畢竟、何よりも愛賞に堪へるものと言ふ極愛観[#「極愛観」は太字]から来るのである。時としては、比較を設定しておいて、大小を観じることも、唯一つに向けて愛を言ふことも、おなじであつたらう。其が自然に分れて来たものと言はねばならぬ。語
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