象は、「身」と「形《カタ》」とが聯関してゐるのだが、其がそつくり、ひつくり返つてゐるのではない。正語序の時代になつて、譬へば「みかた」「みのかた」と言ひかへる慣しが出来てゐたとしても、「したうづ」「したすだれ」のやうには、裏返しにはなつて居まい。抑、此場合は、逆序時代に出来た熟語を、正序時代の語意識に置いて考へることになると言ふ不自然がある。
さうした正逆いづれか一つに止ると言ふことは、結局正語序だけがあると言ふことになるので、かたみ[#「かたみ」に傍線]の如きは、時代の古いものなる為に、さうした判断をするわけである。
明らかに時代によつて、語序をふりかへてゐたものゝ中では、「とり見る」「みとる」などが、著しいものだらう。みる[#「みる」に傍線]は「世話をする」「ねんごろにとりあつかふ」など言ふ内容を持つてゐて、うしろみる[#「うしろみる」は太字](後見る)・たちみる[#「・たちみる」は太字](立ち見る)、中へ入つて世話をやく=仲裁すると言つた用語例の語=とる[#「とる」は太字]は「手づからする」「扱ふ」、さう謂つた意義に使はれることが多い。この「とる」と「みる」との二つの観念の間に加
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