経たものゝ上に、更に正序の「天つひこ」に「ほの……」が接したものと考へねばならぬ様だ。併し「ほ」は支那風に言へば、火徳ある上帝[#「上帝」は太字]と言ふやうな、一種の讃頌の語と考へられ易い。さう考へられるやうになつたのも事実に近いが、元々帝徳を言ふものゝ様に、古代において既に解釈してしまつてゐたやうであるが、恐らくある時代の君主のとてみずむ[#「とてみずむ」に傍線]の標示であつたものと解すべきであらう。動物・植物以外の天体・光線・空気等の族霊《トテム》を持つ部族の首長の類であつたことを見せてゐるものと見る方が適当らしい。即、「ほ」は「火」或は「日光」を標示してゐるのである。
ほの・にゝぎ・ひこ[#「ほの・にゝぎ・ひこ」に傍線]と言つた正序の形が成立しないでしまつたものと見られる。その以前の姿で残つたのが、ひこ[#「ひこ」に傍線]・「ほのにゝぎ」であり、其に尊称語尾を整頓して、「ひこほのにゝぎのみこと」と、正語序時代の語感を満足させてゐるのである。
彦や媛の上にあつた事実が、他にあつても不思議はない。前に出た「ひこなぎさ・たけ・うがやふきあへず」と言ふ名は、「なぎさひこ・うがやふきあへず
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