が旧語序では、媛たゝらいすゞ[#「媛たゝらいすゞ」に傍線]或は媛たゝらいすけ[#「媛たゝらいすけ」に傍線]と言ふ様な形であつたのであらう。古い称号では、もつと複雑なものがあるのだらうが、さう言ふ想定を加へることは、却つて不自然になるから、素朴な形で考へて見よう。
媛たゝらいすゞ[#「媛たゝらいすゞ」に傍線]に対して、尠くとも、「命《ミコト》」は、相当後の附加で、第二次の称呼と言ふべきものである。種々雑多な古代の歴史的或は地方的な称号を統一した宮廷的称呼であつて、「ひめ[#「ひめ」に傍線]……ひめ[#「ひめ」に傍線]」だけで、通じるのである。
次に、末尾につく媛は、後代風には正当な位置に、接尾語としてあるものゝやうに見えるが、当然ある筈の地位に、敬語語尾として据ゑたゞけで、若し敬語語尾が、古くこゝにないのが、語序として正当ならば、前に言つたやうに、ひめたゝらいすゞ[#「ひめたゝらいすゞ」に傍線]でよい訣である。
後代の習慣で、語感に不安を覚えるなら、仮りにひめたゝら・いすゞの命[#「ひめたゝら・いすゞの命」に傍線]としてもよい。唯、語尾に敬語を置かず、語頭に据ゑるのが正しいとすれば、問題
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