交替期は、若しあつたと言へるにしても、遥かに古い時代の事であつて、其は現実としては考へられないやうなもので、空想と同じである。が、さうした努力は、相当長期に渉つて続けられてゐたので、唯何となく、語原的にはふり替るやうに感じてゐるだけで、必しも順から逆へ逆から順へとも言ふ意識なく、唯今までの形と、変化さへ行はれゝばよいと言ふやうな精神誘導力の為に、何となくかはり/\して来たものと思うてよいのだらう。恐らく徐々として、全体に及んだ筈の語序変化の余勢が、遅れて尚行はれてゐるものもあり、又逆に再、正序から逆序へ戻つたものもあらうし、――どちらが逆だといふことはない訣だが、後世の日本語では、基準として姑く、さう称へてゆく外なからう。正語序に置かれたものゝ方が、殆絶対に多いのであるから――其と同じ語序が可なり遅くまでくり返されてゐて、むざね[#「むざね」に傍線]・さうじみ[#「さうじみ」に傍線]の様な、後世的特徴を持つた国語的性質を、新入漢語の上に表して来たものもあつた訣だ。だから中には勿論、語序変化にとり残されたものもあるので、中世国語がその散列相を示してゐる訣である。そのとり残された姿が、新し
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