、内容側より、語だけの譬喩が先だち、譬喩よりもある語・ある音を起すと言ふ形が古い様である。枕詞の成立には色々あるが、古い枕詞はある音を起す為のものである。其からある意味を持つたものとしての語に係る様になつて来る。長短で時代を分けることは出来ないが、大体に於てまづ此区別はある。
古いものほど、意味に関係なく、短い音を呼び起すことになつてゐる。即、序歌の小さくなつた形である。前の万葉の歌などは、其だ。其も、固定した枕詞が出来るまでには、かなり年代を経て居るので、今の合理観には這入つて来ないのも道理である。
枕詞と認められてゐるもので、元は違ふ筈のものがある。地名を重ねたもの、単なる修飾句、皆今は枕詞として扱はれてゐるが、序歌と聯絡のあるものが正統とすれば、此は別のものと考へた方がよい。唯其中、混同せられて厳重な意味の枕詞になつてゐるのもある。「石《イソ》[#(ノ)]上《カミ》ふるき」など言ふのは、地理を表す習慣的の表現が、枕詞として働き出して来たのである。地形を現す語を直に地名とし、移住すれば地名を持つて行くと言つた原因で、同名の分布が多い。其為に、隣国・隣邑の名を連ねて呼ぶので、大地名の
前へ 次へ
全16ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング