に出て嘆く(同)
[#ここで字下げ終わり]
大部分が事柄と謡との二部に分れた譬喩を持つた短い本文に続く為に使はれ、一つづゝの気分を捉へるまで漫然と語を行つてゐる。其がある語に行き当ると、急に考へが纏つて了ふ。結果から見れば、予定あつてした修辞法に見えるが、元々出任せに詞を聯《つら》ねて行くのである。だから中には紀行か物づくしのやうな物が出来て来る。此が進むと、並べて行く無意味な詞の部分々々に考へを結びつけて、終末に近づいてから思想を一貫させると言ふ風になる。日本の道行きぶり・物尽しの起原は、抑《そもそも》此処に発して居る。
的確な考へを捉へないで、而もくどい物狂ひの詞が、内容乏しく、呆けた眼に映じ、心に動く事物の介添へで、言ひ方は早いが思想はのろく移つて行く。象徴的ではあつても、要領を得ない文句である。神話の口頭文章に発した修飾法が、さう言ふ発生点を忘れても、かうした発想法を守つて居たのは、やはり考へは詞を述べる中に纏つて来るからである。三題噺その他の話術家の心持ちは、此処にあるのである。
矚目の事は、外景を叙して行く中に、段々考への焦点に入つて来る。気分は描写に転じて来たのだ。だから
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