ツ》の崎なる一つ松、あせを。ひとつ松 人にありせば、大刀|佩《ハ》けましを。衣《キヌ》着せましを。一つ松、あせを(景行記)
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此形が、深く頭に入つて、
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やすみしゝわが大君の、朝戸にはいより立たし、夕戸にはいよりたゝす 脇づきが下の板にもが。あせを(雄略記)
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と言ふ様なものになつて、対句としての意味なく、単なる囃し詞になつた。此歌などは、対句としても長くなつて来たもので、朝夕の違ひだけで対句としての位置を音脚に占めるので、畳句と言うてもよいのだ。
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道にあふや、尾代《ヲシロ》の子。天にこそ聞えずあらめ。国には聞えてな(雄略紀)
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前のは一句で対句を作つてゐるのに対して、此は二句で形式の整うた対句を拵へてゐる。
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もゝしきの大宮人は、鶉とり領巾《ヒレ》とりかけて、まなばしらをゆきあへ、には雀うずゝまりゐて、今日もかもさかみづくらし。高光る日の宮人。ことのかたりごとも。こをば(雄略記)
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こゝになると、内容の対句は形式の対句にな
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