様だが、さうではない。そねめつなぎて[#「そねめつなぎて」に傍線]と続くのでなく、其根芽つながつて居ると言うて、つなぐ[#「つなぐ」に傍線]と言ふ全体と言ふ様な語に転向したのである。
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笹葉にうつや霰の たし/″\に率《ゐ》ねてむ後は、人|議《ハカ》ゆとも(允恭記)
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「たし/″\に」は擬声から、確実にと言ふ意にふり易へたのだ。
譬喩でない為に、内容と交渉がない。そこに意義を求めようとする無意識の習慣が、気分を受けとることになる。万葉になると、末にはこの点に意識を発してゐる様だが、能動的な運動は見えなかつた。古今になると、枕詞・序歌に描写以上の職能のある事を認め出して、既に濫用に傾かうとしてゐる。最多く比と興とを混用した様な姿になつてゐる。
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ふゆごもり 春の大野を焼く人は、やき足らじかも、わが心焚く(万葉集巻七)
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此ほどまでになつた譬喩歌は、万葉に発達して、後には一部門をせなくなつた。万葉の末期は譬喩全盛で、枕詞や序歌の様な部分的のでは満足しなくなつた。寄物陳思・譬喩歌の二つの部類が出来たが
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