きあくがれ人との間に、共通するものを考へた、古人の心である。其に導かれる、今一つのこと、即ねたみづま[#「ねたみづま」に傍線]とつまわかれ[#「つまわかれ」に傍線]の物語とには、どうしても離れぬ程、根柢に疏通して居るものがあつたのである。一つの形式の伝へが同時に、他の形式の要素を具へて居らねばならぬ。さう言つた必須なる項が、此二つの間に横つてゐるのであらう。
近代風の物思ひより外にすることの出来ぬ我々は、どうかすれば、磐姫皇后の嫉みの中に、すさのをの[#「すさのをの」に傍線]尊の破壊の意思さへ感じることがある。此|人間期《ニンゲンキ》の大きな女性を、神の世界に考へあはせると、明らかに同じ様式として、大国主命の妻すせりひめ[#「すせりひめ」に傍線]を見るだらう。すせる[#「すせる」に傍点]といふ語は、我々の持つくすべる[#「くすべる」に傍点]・くすぼる[#「くすぼる」に傍点]に当る古代語であり、中世のふすぶ[#「ふすぶ」に傍点]と言ふ語の持つ、二つの意義を、そのまゝ兼ね備へてゐる。いぶし[#「いぶし」に傍線]・くすべる[#「くすべる」に傍線]と共に、ねたみ[#「ねたみ」に傍線]・やく[#
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