へ、辞《コト》をへまつらくと申す。」――鎮火祭
「……親王たち・王たち・臣たち・百官人たち・天の下の公民に至るまでに、平らけく斎ひ給へと、神官《カムツカサ》天津祝詞の太祝詞事を以ちてたゝへ、辞をへまつらくと申す。」――道饗祭
[#ここで字下げ終わり]
鎮火祭の方は、如何にも、祝詞の大部分が、天つのりと[#「天つのりと」に傍線]のやうに見える様な形になつてゐるのだが、道饗祭の分を参照すれば、天つのりと[#「天つのりと」に傍線]は、別に唱へられた事が推測出来る。つまり、天つのりと[#「天つのりと」に傍線]に移る部分と、其がすんで本文に還る処との継ぎ目の様子が、変化して来たのである。殊に最後の「天つのりと云々」の続きあひを見ると、其が知れるであらう。
併し若し万一の偶然に依頼してよければ、鎮火祭の祝詞の火産霊神の生れ、其神の威力を防ぐ為の呪物を母神が教へられたと説く部分は、天つのりと[#「天つのりと」に傍線]なのかも知れぬ。若しさうならば、愈天つのりと[#「天つのりと」に傍線]と言はれたものゝ本体を知ることが出来るのである。
さうでなくとも、察せられることは、ある呪術に直属した短い詞章に、天
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