れ替へられるのだから、数音の変化はあつた筈である。又「斎ふとして」の処は、延喜式に、『若、後斎[#(ノ)]時者、加[#二]後字[#一]』とあるから、こゝも、其都度一語の変化があつたのである。かう言ふ必要な変化や、入れ替へは、相当にあつた筈だが、此二つの記録によつて推測しても、延喜式や、台記に記される以前に、既に記録せられて久しかつたといふことである。唯記録になつてゐることは、表面は、秘密であつたらう。さう考へるのが一番適切である。而も、記録しながら、してゐない貌をつくつて居るところに、深い意義があつたのである。
呪詞の記録
宮廷公式用の詞章は、弘く発表せられるのだから、秘密にすることはない。早くから記録となり、国史に載せられてゐることは、宣命・詔旨の類で見ても明らかだ。が、のりと[#「のりと」に傍点]になると、さうは行かなかつたであらう。だが其とて、皇親・官吏・神職等列座の儀礼の一部分なのだから、周知の詞章である。結局、式・儀式類の、人の見る書類に記録するに到るのは、さうあるべき道筋であると言へる。
だがさうした公式のものゝ外は、詞章の神聖なる力は、周目にさらさぬ所に保
前へ
次へ
全63ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング