れたのであつた。
宣命使を出《イダ》し立てる場合は、神宮を以て、単なる神とは考へてゐなかつたのである。
まづのりと[#「のりと」に傍線]・よごと[#「よごと」に傍線]其他の語義から説明して見よう。
のりと[#「のりと」に傍線]は、先輩説の如く、のりと[#「のりと」に傍点]き言《ゴト》でもなかつた。のりたべごと[#「のりたべごと」に傍線]でもなかつた。天津詔刀乃太詔刀などといふ宛字は、語原の他にあることを暗示したものゝ様に見える。古代信仰の用語の類型を集めて見ると、著しく「と」といふ語尾らしいものが浮んで来る。神事一座を行ふ廓をさすものゝ様に見える。のりと[#「のりと」に傍線]は即、宣《ノ》る所の神事座といふことである。宣《ノ》り処《ト》における口誦文が、のりとごと[#「のりとごと」に傍線]であつた。「あまつのりとのふとのりとごと」なる古語は、神秘なる宣り処における壮大なる「宣《ノ》り処《ト》」の詞章といふことである。古風な修飾発想をしてゐるが、結局、神聖な宣り処に起つた詞といふに過ぎない。だから、のりと[#「のりと」に傍線]は、のりとごと[#「のりとごと」に傍線]の略である。のりとき言
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