合せられたのに過ぎない。のりと[#「のりと」に傍線]其自体の本来の形は、宣下式であつた。さうして奏上式な部分は、寿詞《ヨゴト》の本色とする所であつた。即、のりと[#「のりと」に傍線]がよごと[#「よごと」に傍線]の分担をも兼ねるやうになり、寿詞と謂はるべきものまでも、其名称を変化させる訳にいかなかつた最後の少数だけが、よごと[#「よごと」に傍線]の称へを守り遂げたまでゞある。さうした、宣命と祝詞との間の区劃は、現実に残つたものについて言ふと、祝詞は、宣下奏上両面に渉つては居るが、ともかくも神・精霊に対して言ふものである。が、聴きて[#「聴きて」に傍点]として、人を考へてゐる場合もある。だが宣命の方は、常に人を対象としてゐる。但、生者及び過去の生存者としての人である。此は恐らくまだ神格を得ぬものに言ひかけるといふ考へを持つて居るのであらう。
生者に宣ることを原則としてゐる点から見れば、国語を以て表現した詔旨といふことになる。さうして現存の宣命は、伊勢神宮及び陵墓に告げる場合の固定したものゝ外は、常に同一の詞章を用ゐたことはなかつた。必、一つ/\の事情に適合するやうに、全然新しい文章が作ら
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