の物語、これに関聯した「天語歌《アマガタリウタ》」なる雄略朝の歌々があり、又海の流離譚に縁を持つ、軽[#(ノ)]太子・軽[#(ノ)]大郎女の天田振《アマタブリ》の如きも、其らしいし、万葉・日本紀・常陸風土記に痕を止めた麻績《ヲミ》[#(ノ)]王《オホキミ》の海人歌(仮りに命ける)などが其だ。さうして、其系統を襲ぐものとしては、後々まで、日本文学の発想法の一類型とも言ふべきものが、続々として出て来てゐる。即、石上乙麻呂の歌――及び詩――、中臣|宅《ヤカ》守・茅上郎女《チカミノイラツメ》の相聞連作、源融・小野篁・在原行平の歌、其から更に源氏物語その他の、貴人流離の物語の人生観を誘導してゐる。
又一方には、我々が穴師部――或は穴太《アナホ》部――の物語と称へてゐる所の、幼弱なる男女の貴人の、棄てられて水たまる道に仆れ死んで、転生する物語なども、彼等が行うた山の聖水の禊ぎと、関係した古物語であるのだらう。此が、竹取物語・恋[#(ノ)]淵譚(伊勢物語)などゝ謂つた文学の、限りない型に岐れて行く。
かうした叙事詩が、殊に、其自身の中に抒情部分を分出して来ること、而も其が、其一聯の詩の生命を扼する部
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