口誦する事によつて、祝詞全体の効果を持ち来すもの、と考へられる様になつた。此諺が、次第に意味の全く不明な呪術的なものと、社会知識的なものとに岐れて来る。そして、後者は、教訓的な意義を持つて来るが、此は必しも新しい事ではない。而も、さうした諺自身が既に、叙事詩の影響を受けてゐる。言ひ換へれば、其発生した呪詞時代を過ぎて、叙事詩時代に入つても、尚新しく出来るものがあつて、叙事詩の影響を受けたからだと云つてよい程、歴史的の内容を伴うてゐる。或は、更に古く脱落してゐたものに、叙事詩的な背景を附加して来た部分もある様だ。最異風な諺を挙げて見れば、地名・人名に絡んだ枕詞の古形をなすものが其で、昔は国讃美《クニボメ》・人讃美が、呪詞の精髄であつた事を示してゐる。一方、さうした諺から、所謂|謎《ナゾ》が生れて来る。日本文学に於いて、割合にかへりみられてゐないのは、古代に於ける謎の類だ。此は、大方の為に、問題を提供して置きたい。
諺の様式は、大体に偶数句を以て出来たもので、此から言はうとする歌と、大体に違ふ点は、問答唱和風でないことである。さうして、歌は主として、奇数句に傾くことだ。
此小さな論文を以て
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