、私の師匠柳田国男先生の同時に、同じ叢刊の中に発表せられる論文に接続させようと試みたのであるが、其結び玉になるべき歌の事をお話する前に、もう余白が無くなつた。其で、此処には極めて概念的に書き添へておくことに止めたい。
諺の場合と同じく、歌は、呪詞から変化した叙事詩の、最緊密な部分と目せられる部分で、恐らく、古い叙事詩に含まれて居なかつたものが、次第に挿入せられて来たのだらうと思ふ。伝承の都合からして、問答唱和の形を残して居らないものも多いが、実は、さうした形を採らねばならなかつたのである。併し、根本的には、諺の形式の叙事詩の中で発達したものが、歌である。而もさうした要素は、既に呪詞の中にも見えてゐた。所謂天つ祝詞の部分に於いて、発唱者と被唱者との間に問答が行はれた事は、祝詞に於ける所謂、返し祝詞或は覆奏《カヘリマヲシ》の存在によつて知る事が出来る。延喜式の祝詞で見ても、所謂称唯(ヲヽトトナフ)の部分は、やはり此形である。かうして発生したものが、呪詞の叙事詩化して行く道筋に、次第に勢を得、分化して来る。だから、歌をうたふ事に、叙事詩及び呪詞を唱へるのと、同じ効果を予期する事が出来たのだ。
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