出来ない。巫女の職分であつた事の、男覡の為事となり代つて行つたのもあるだらう。或は、巫女自身が神の妻であるとする信仰から、神と巫女とを混同した多くの例があるから、巫女の仕へる神の業《ワザ》事が巫女の為事となり、同時に神になる事の出来た男性の業も、これに並行して来た迹は十分見られる。
日本に於いては、巫女の勢力の盛んであつた時代が古く且つ長い。宮廷・貴族・国主の家々には、階級的に多数の巫女がゐる。国主・貴族の最上級の巫女が、宮廷に召されて、更に其上に、幾段かの巫女を戴いて、宮廷の神に仕へる。宮廷に於いては、原則として、王氏の巫女と、他氏の巫女とが対立してゐた。後次第に、他氏の巫女が栄えて、王氏の方は衰へて来る。それは、神なる人の主上に仕へる意味に於いて、人間生活の上にも勢力を得たので、宮廷の神に、専仕へるのが、王氏の巫女の為事であつた。とりわけ、当|今《ギン》の皇女は、平安朝に至るまでも、結婚の形式を以て嫁することが出来なかつたのは、総て巫女の資格を持つて、生れて来られるものと考へたからだ。かうした高級巫女に入らせられる方々が、伊勢・加茂の斎宮・斎院以外には、著しくはなくなつて来た。宮廷
前へ 次へ
全69ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング