は照るらし(詠月。万葉集)
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所謂大伴門(朱雀門)に月のさしてゐる有様を、讃美詞《ホメコトバ》に移したものであると共に、大伴氏自身に関係の深い歌だと言ふことは明らかである。
万葉集巻五にある憶良の「令[#レ]反[#二]惑情[#一]歌」(神亀五年作か)の如きも、聖武天皇の詔詞を飜訳したものなることは明らかだ。其と同じ系統で、更にそのなり立ちを明らかにしてゐるものは、大伴家持の「賀[#二]陸奥国出[#レ]金詔書[#一]歌」である。即、同年の宣命と割り符を合せる様になつてゐる。恐らく此時代には、詔詞が発せられると、族長・国宰の人々は、かうした形式で、己が部下に伝達したものと思はれる。其と同時に、その氏・国の特殊な歴史と結びつけて表す風があつたのである。かう云ふ考へ方から、万葉の長歌を見てゆくと、其本来の意味のはつきりして来る物が、もつとあるかと思ふ。古いところで云つても、藤原奠都の時の役民歌・御井歌などは、呪詞の飜訳と言ふことの出来るものである。或は既に、呪詞なくして、長歌ばかりがその用に製作されてゐたかも知れない。殊に「藤原[#(ノ)]御井[#(ノ)]歌」に至つては
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