歌とも称すべきものが処々に散見してゐる。
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虎にのり 古家《フルヤ》を越えて、青淵に鮫龍《ミヅチ》とり来む 劔大刀もが「境部王詠数首物歌」(万葉)
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かうした一種の創作も、平安朝まで残つて鎮魂歌――即、神楽歌の替へ歌――として用ゐられた、
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石[#(ノ)]上ふるやをとこの大刀もがな。くみのを垂《シ》でゝ、宮路《ミヤヂ》通はむ(拾遺)
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の歌を参照すると、時代は前後してゐるに拘らず、一方には遥かに古い形が残り、他方には其非常に変化した姿を出すと云つた、民間伝承の特異性を示してゐる。其と共に、万葉の歌が拾遺の歌によつて、稍《やや》原意を辿る事が出来さうだ。
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是に二嬪恒に歎きて曰く、悲しきかも、吾が兄の王、いづくに行きけむと。天皇、其歎きを聞きて、問ひて曰く、汝、何ぞ歎けると。対へて曰く、妾が兄・鷲住王、為人、強力軽捷なり。是によりて、独り八尋屋を馳せ越えて遊行《ユギヤウ》し、既に多日を経て面言することを得ず。故に歎くのみ……(履仲紀)
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同時に、ふる[
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