#「みこと」に傍線]と云ふ語は、みこともち[#「みこともち」に傍線]の慣用から来た略語である。各階級に亘つて言うたからの区別である。だから、みこと[#「みこと」に傍線]なる語は、神から天子及び其以下の貴族にまで附くことになつてゐるのだ。即、其最明らかなのは、皇子《ミコ》の場合に窺はれる。天子の御代役を勤められる、謂はゞ摂政の位置に居られる方には、特別に皇子《ミコ》[#(ノ)]尊《ミコト》と称へてゐた。此は、他のみこと[#「みこと」に傍線]と、稍《やや》、語の内容が違ひ、皇子にして天つ神のみこともち[#「みこともち」に傍線]と云ふことである。
日の皇子《ミコ》の為の皇子尊よりも、更に高く位せられるのが、すめらみこと[#「すめらみこと」に傍線]でおありなされる。すめらみこと[#「すめらみこと」に傍線]が此世に降臨せられると云ふことは、天神の仰せを此土の精霊たちに伝へ、其効果を挙げることを期せられるのだ。だから、正確に信仰上の事実として云へば、春|天降《アモ》られた日の御子が、初《ハツ》春のみこと[#「みこと」に傍線]をみこともつて[#「みこともつて」に傍点]、扨、秋に至つて、みこともつた事
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