た形だと云はねばならぬ。だから、われ/\が祝詞を研究するには、現存の材料を考察するだけでは、結局無駄な努力になつてしまふのだ。

     三 中語者の職分

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時天照大神誨[#二]倭姫命[#一]曰、是、神風伊勢国則、常世《トコヨ》之|浪《ナミ》[#(ノ)]重浪帰国也《シキナミヨスルクニナリ》。傍国可怜国也《カタクニノウマシクニナリ》。欲[#レ]居[#二]是国[#一]。故随[#二]大神教[#一]其祠立[#二]於伊勢国[#一]。因興[#二]斎宮于五十鈴川上[#一]。是謂[#二]磯宮[#一]。則天照大神始自[#レ]天降之処也。(垂仁紀)
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神と人間との間に立つて物を言ふ、後世の所謂中語に当る職分をしてゐた人たちには、尠くとも二通りの形のあつたことが考へられる。宮廷の尊貴な女性では、中天皇《ナカツスメラミコト》と申してゐる。即、神と神の御子なる主上との間に立つて、語をば持つ[#「持つ」に傍点]御方とするのだ。其から神なる人、主上と人間との間に立つて、同じ為事をするのが、所謂中つ臣、即、中臣である。而も、此中臣も意味広く、一氏族だけの職でなかつたの
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