類かの呪詞を分化して来る。併しながら、其一番初めのものに近い形と考へられてゐるのは、詔書式に見えた朝拝の詔詞よりない。而も恐らく、此が主上の御躬づから発せられる詞章として、断篇化して残つたものと思はれる。其他の詞は、宮廷神人で、主上の御代役をした神主が、代宣することになつて行つた。延喜式の祝詞――此が現在残つてゐる最古い祝詞の一群を含んでゐる、といふ点に誤りはないが、其全体並びに、固定した一部分すらも、われ/\にはそんなに古いものだとは思へない。唯、其中には、古い種も存してゐると言へるだけだ。其が、われ/\にとつて、古い呪詞を考へる唯一の手がゝりである――によると、中臣|祝詞《ノリト》と、斎部《イムベ》祝詞の二種類の区分を考へてゐたのは明らかだが、其性質から見ると、平安朝に近づくに従つて、中臣の掌る祝詞は、天子の代宣なる形を見せて来、斎部の祝詞は、天子に奏上する精霊の側の詞章から、だん/\変化して来た跡が見える。而も、例外はあるが、主として伝来の古いといふ条件を示す「天つ祝詞」と言ふ語は、斎部祝詞に属するものに見えてゐる。さすれば、祝詞に関する信仰・知識は、延喜式のものは、非常に変化し
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