見ても知れる。遠来の神の居る間に、新しく神役――寧、神に扮《ナ》る――を勤める様になつた未受戒の成年に戒を授けて、童《ワラベ》の境涯から脱せしめる神秘を、行うて置くのであつた。この遠来神の行列は、長者《チヤウジヤ》の大主《ウフシユウ》と言ふ、仮装した人を先に立てゝ、その長男と伝へられてゐる親雲上《ペイチン》――実は、その地の豪族を示すものらしい――その他、をどりの人衆が、夫々わり宛てられた役目の服装をした、風流《フリウ》姿で従ふのである。
此は、全くやまと[#「やまと」に傍線]本土にも、室町・戦国を頂上として、前後に永く行はれてゐて、「風流」と呼ばれた仮装行列であつた。唯役々が皆、現代人ではないが、役者は人間だ、といふ考へを持つてゐる。だが此は、八重山の盆祭りに出て来るあんがまあ[#「あんがまあ」に傍線]群行の伝承を参考して見ると、他界の霊物だといふ意識の落ちたまでだ、といふ事が明らかになる。
長者の大主、設けの座に直ると、改めて名のり――炉辺叢書「山原の土俗」参照――をして、祝福せられた生活を感謝し、更に多くの一行が、皆自分の子孫なることの果報を述べる。此は、遠来の神が、土地農作を祝
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