うに、さういふ人が、啓示をもつて出て来るやうにし向けなければなりません。極端な言ひ方をすれば、われ/\幾万の神道教信者の中に、最も神の旨に叶つた予言者たり得るものありやといふことに帰するのです。
われ/\のすべきことは、さういふ時を待つ態度であります。もし私が宗教的自覚状態に入つて、深い神の意志を把握する――。さういふ時に至るまでの用意が出来てゐるかといふのです。われ/\は、どういふ神を得ようとしてゐるか。われ/\はどういふ神をば曾て持つてゐたか。かういふ解決を要する、最後的な疑問を持つてゐるのでなくてはなりません。
ところが、戦争末期になつて、不思議なことが起つたのです。誠に笑ふべき形を持つて現れて来たのですが――、そこに考へてよい旨が感じられました。それは神道家・官僚人らの間に、天照大神が上か、天御中主神が上かという争論が起つたことがございました。それをば世上の争ひとして、或は世上の争ひに似たやうなことで解決つけようとした人もあつたのです。其時、われ/\は非常に憤りを感じました。神々に関する知識を解決するのに、何たる行動をとるのだらう。宗教のことをば、どういふ筋合ひあつて、かういふ
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