膨れて来る。魂も発育して来るという風に、両方とも成長して参ります。その一番完全なものが、神、それから人間となつた。それの不完全な、物質的な現れの、最も著しく、強力に示したものが、国土或は島だ、と古代人は考へました。それが日本の大昔の神話に現れてゐる、大八洲国の出来たといふ物語り、或は神々が生れたといふ物語りです。
つまり神によつて体の中に結合せられた魂が、だん/\発育して来る、それとともに物質なり肉体なりが、また同時に成長して来る、その聖なる技術を行ふ神が、つまり高皇産霊神・神皇産霊神、即むすび[#「むすび」に傍点]の神であります。つまり霊魂を与へるとともに、肉体と霊魂との間に、生命を生じさせる、さういふ力を持つた神の信仰を、神道教の出発点に持つてをります。それで考へ易い誤りがあつて、日本は昔から、その産霊神をば祖先として考へてゐる家々もありました。
おなじ考へ方からして、古代の書物に、これを宮廷の祖先といふ風にも考へてゐるのです。皇祖とか祖宗とか書いてあります神の中には、この高皇産霊神・神皇産霊神たちを申してゐる例も多いのです。しかしよく考へますと、魂を植ゑつけた神で、人間神ではない
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