たものといふ事が、出来さうなのである。
此に関聯して、一つ不思議なことがある。それは垂仁の巻に、后さほ[#「さほ」に傍線]媛が、兄と共に、稲城の中で焼け死なうとされた時に、天皇が使ひを遣して、「汝の堅めし美豆《ミヅ》乃|小佩《ヲヒモ》は誰かも解かむ」と問はしめ給ふと、さほ[#「さほ」に傍線]媛は美智能宇斯王《ミチノウシノミコ》の女の兄毘売・弟毘売をお使ひになつたらよからう、と奉答されてゐる一事である。此は、従来の解釈では、后となるのだから、小佩を解くのである、といふ風に解せられてゐるが、其考へは逆であつて、小佩を解くから、后になるのである。小佩を解くのは、禊に随伴する必須の条件であつて、禊と小佩を結び堅める役目と、妃であるといふ事とは、何処までも循環的の関係である。而も、第一には、水中から現れて、天子の物忌みの小佩を解く役の人である。
五
此みこともち[#「みこともち」に傍線]の思想が変形すると、今度は「申」更に簡単になると「預」になる。「申」となると、みこともち[#「みこともち」に傍線]よりは、少し意味が広くなつて、摂政の如きものも「政申すつかさ」である。此「申す」と
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